さて、このコンテンツを始める前に、バクーンのアンプの特徴とこれまでの経緯について、少々説明しておいた方が分かりやすいと思う。
バクーンのアンプは、伝送系における修飾を受けにくい電流入力〜電流出力アンプを目標に開発されてきた。しかも、増幅は二つの抵抗の比R/RLによって実現され、Gm素子の影響を受けにくい物になっているところが最大のポイントで、増幅のリニアリティを追求する際に選択された方法であった。かつて、これに似た手法を取り入れたものも幾つかあったようだ。当方の記憶では、1980年代、Pioneer が発表したZ1シリーズである。無帰還・電流増幅(この表現にもいろんな方式を含んでいる)を、有名なヘッドアンプH-Z1を初め、プリアンプC-Z1とモノラルA級パワーアンプM-Z1にも採用し、独特の音質を誇ったものだった。しかし、その後は、プリとパワーこそC-Z1a、M-Z1aまで改良されたが、H-Z1はそのままに開発はストップし、後継機種は出てこなかった。現在ではバクーン以外に、この方法を積極的に推し進めているメーカーはないと思う。
そのSATRI回路の開発の過程で、Ver.1からVer.4.3までは基本の電圧増幅部分、Ver.5(最新5.1)は動作点を固定するためのスタビライザみたいなもの、Ver.6(最新6.4)は出力段のバイアス固定、Ver.7(最新7.1)は電源の電流伝送、といったように、動作点の明確化〜固定が情報処理の精度を向上させるという視点に立って、結果音質向上を達成して来ている。
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