先日、No.17という大昔のSTEREO SOUND誌を入手した。長岡先生の「オーディオ工作室」という記事が連載されていた頃の貴重なものだ。この連載、何回続いたのか知らないが、最初で最後のステサン寄稿だったのではないか。その第三回のお題は「4チャンネルステレオへの挑戦」。1971年、まだ当方はオーディオの「オ」の字も扱っていなかった頃だ。時は第一回目の4チャンネルの黎明期ではあるが、すでにマルチチャンネルのことを書いておられ、もうマトリックスが発表されている。バックロードもそうなのだが、このマルチチャンネルも、実は長岡先生は音場というものをいつも考えておられたのがよく分かるのである。ちなみに、この後1974年に、小遣いを全部叩いてSONYのQS4chのステレオセットを購入したのが、当方のオーディオの始まりだった。
それから30年以上経って、再びマルチチャンネルは主流となったが、その内容はどうであろうか。やはり、これもHD-HTPCを始めてより考えるようになったことだ。当方は、2ch-SPマトリクス派からディスクリートマルチチャンネルに変わってしばらく経つが、最近のディスクに記録されている音声コーデックをまともにデコードできないことに、非常に不満を覚えている。受けるアンプが完全対応できていないどころか、プレーヤ側でも出せない物がある。しかも結局は圧縮しないと容量が足りないし、HDMIの伝送速度には限界があって、周波数が高くなればビット数を落とさざるを得ない。何が次世代、何がHDMI Ver.1.3だ!むしろ、何でもかんでもPCMに変換してダウンミクスした方が悩まなくて済むし、聞き慣れた音質で安心感がある。そうしてみると、すでに4.0ダウンミクスにしているわけだし、ダウンミクスすればL/Rの4ch成分も出てくるので、SPマトリクスも可能になる。じゃ、わざわざディスクリートに拘る必要もないかな、という考えがよぎったりするのである。今も考え中。