予告通り朝9時少し前、いつものように「おはようございま〜す!」と元気な声と共にU氏がお出でになった。早速午前中にフォーカス調製なのだが、その前に、今回の隠し球。別に当方は知っているわけだが、誰にも明かしていなかっただけ。こっそりDELTA HD-10Fというレンズを入手していたのだ。当方の1292は初期〜中期型らしく、オリジナルのレンズは同社HD-10というもの。これは二次湾曲スクリーンにも対応できるレンズが故、平面スクリーンに投写すると中心部に比べ周辺部分のフォーカスが甘くなる傾向にある。人間の目は、見ている中心部分ははっきり見えているが、周辺はぼけて見えているわけで、その意味からは問題ないはずなのだが、スクリーンの中央から脇の方に視線をずらすに同期してPJのフォーカスついてくるわけではないので、時は横長16:9の時代にあって中心部と両脇のフォーカスの差が気になっていた。そこで10F、VPH-G90にも採用されているレンズで、中心〜周辺まで平均して高いフォーカスを実現できるのである。凸の旧型4;3TVとフラット画面の16:9TVみたいな感じとでも言っておこう。
さて1292、メカニカルな調製が肝のPJで、ここにプロの技が冴える。マニュアル通りの設定をしたんでは、そこそこの画は出るけれどプロの写真家が撮った写真のようなフォーカスは望めない。さらにマグネフォーカスも神業的スピードで調整され、みるみるうちに繊細均一なHパターンが現れてくる。ドットになるともう夜空の星のごとし。すでにここで感激してしまう。
次にバイアスとゲインをビーズスクリーンに合わせたダイナミックレンジにしていただく。そして色乗りの調整。ぐっと黒が締まってきて、いい意味でSONY管らしくない色乗りが出てくる。ここで丁度お昼。U氏と顔付き合わせ、貴重なお話しをききながらの昼ご飯。
午後はいよいよレジストレーション。個々で問題発生。妙なピンクの横線が・・・なんじゃこりゃ!しばし悩むがU氏の機転で昨日の電圧系(EC)基板交換で基線が折り返していると判明。もう一度マグネをちょちょいと触って解決。やっぱりプロだ。その後、またもや神業的スピードで調整。RGBいずれの線も細く均一で同じ太さで正に「線」。当方の調整のミミズがのたくったような線とは全く違う!そこで画を出してみると、びっくりだ。あとは内部信号と外部信号の中心をあわせて、コントラストやブライトネスで仕上げ。
その頃にはいつもお世話になっているmさんも様子伺いに、また昨日から連日でSBSのH氏も駆け付けていただいていた。普段は企業をお相手にお仕事をなさっているH氏、「1292からこんな画が出るなんて知らなかった。」と仰る。引き取りで2回、出張で3回も修理におつきあいいただいたSBSの皆さんには、本当に無理難題を申し上げて申し訳なかった。H氏のような技術者と、当方のような所謂マニアの間の深〜い溝を埋めるべく、橋渡しをしていただいたU氏あっての解決だったのだろうと思う。苦節1年3ヶ月、R/G管のリキッドカップリングがハンダこてで焼かれているという、どんな素性か分からぬ激安中古のVPH-1292QJが、ようやく本領発揮。すでにCRTのランタイムは2000時間を超えたが、これから少なくとも2〜3年間ぐらいは故障の心配もなく安心して映画鑑賞に浸れるだろう。
ところで、いのさんに「どつぼの3管難民の竹男様」という異名を頂いた。 ありがとうございます〜(*^_^*)。 現在1292らしからぬ画を出すことができていて満足であるが、個人的にはこれがSONYの画だと思っている。 しかし、正にどつぼ、3管難民って当を得た表現。 確かにもう次の悪魔の囁きが。。。
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