今回はNakamichi 600Uというカセットテープデッキだ。当方は1978年頃に使用経験がある。音はいいのだが、駆動系が弱点で、巻き上げられなくなる不具合が出やすかった。最近中古を入手してレストアとまではいかないものの、結構な内容の修理をしていただいて実験。35年近く前の製品の上に、2ヘッド、シングルキャプスタンというしょぼいスペックだが、古くて腐ってもNakamichi、びっくりするような音が出る。
LPが聞ける人なら、大音量であってもヒスノイズ(テープ独特のノイズ)も問題ないレベル。正直、こんなにダイナミックレンジがあったとは、35年前には思わなかった。シングルキャプスタンの上に経年劣化で、決してワウフラッターも誉められた実数ではないが、そんなことは微塵も感じさせない実に心地よい音なのである。柔らかい音という意味ではないし、単なる郷愁でもない。
データファイル時代にあって、カセットテープという伸びたり音飛びを起こしたりしうる空間体積のあるメディアではあるが、よくぞここまで仕上げられたものだと改めて感心した。ということは、2トラ38も今鳴らしてみれば凄いかも。