最近、長岡先生の初期のステレオ指南本を入手した。近年の先生の著書は、確かに要点をよく書かれているのだが、より古くなる程に、何か少し違っ印象がしてならなかった。それで、この2著書、ステレオの実際知識とマイ・ステレオ作戦、読んでみたかったのである。共に昭和45年発行と、30年以上も前の著書である。ところが、これがとても興味深い。
ステレオの実際知識は、ステレオを理解する上での、いろいろな原理を解いた本である。表紙写真もEMTのアナログプレ−ヤーだ(型番は知らない)。本は古くても理論は変わらないので、今でも全く実用となりうる。もちろんデジタルは記載がないが、読んでみると、当方、正確な知識がないことが露呈する。
マイ・ステレオ作戦は、以下にその巻頭書きを拝借する。
「ステレオは複雑怪奇な精密機械であると同時に手軽にいじれる楽しいオモチャでもある。この本はステレオを後者としてとらえた本である。おそらく正統的なオーディオ研究家の顰蹙を買うにちがいないハレンチなエッセイ、パラドックス、常識をひっくり返すゲバゲバ工作、笑いと風刺のオーディオ・コントとオーディオ反体制の最左翼に立つ、世にも不思議な本である。こんなヘンな本はどこにもないと確信している。・・・・・しかし、文は人なり、音も人なりあなた自身の音は、あなた自身で作るべきではないか。音楽とは音を楽しむことであり、再生装置は楽しい音を作るための器械であり、オモチャである。最終的には「個性的なあなたのための、個性的な音作り」というのがこの本の狙いなのである。」
となっている。
30年も前に、かくも的確に現在の世相やステレオの状況を予測されていることには、驚きを隠せない。と同時に、その予測のもとに書かれている内容は、今読んでも目から鱗である。その語り口調は、晩年の先生の、若干ものごしやわらかなものとは違う。
これを読んだあと、近年の先生の言葉や著書を読み直すと、さらに理解できる気がする。最も先生らしい本なのかもしれない。
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