つい今し方、放送された番組である。YAMAHAの調律師村上さんとスビャチスラフ・リヒテルのやりとりを中心に、世界に通用するピアノを造るドキュメンタリーであった。
「フォルテシモは宇宙の広がり、ピアニッシモは澄み切った空、ピアノの音色は神のようなもの。」という意味をまさぐり、ヨーロッパの教会で空間ごと音楽であることを学ばれたりしながら、日本古来の製法である「あり組」でピアノの強度を出してフォルテッシモの深みを獲得し、ミクロン単位の紙などの調律で繊細なピアニッシモを実現してゆくという、大変興味深いものであった。
ピアノのフレームの強度が不足するとフォルテッシモが出ない。また、鍵盤の下にクッションがあって(恥ずかしながら、当方、全く知らなかった)、タッチの力があるピアニストには、これをコンマ1〜2ミリ減らすことで、フォルテッシモの表現の幅が出るが、力のないピアニストには弾づらくなるというのだ。
がこれは、オーディオにおいても、全く当てはまるものだと感じながら、拝見させて頂いた。確かに、爆発的エネルギーを表現するには、SPの強度が大きく関係するし、箱のエージングや細部の調整がなされないと繊細な音は出てこない。そして、何よりも、使い手(ピアノなら弾き手)の力量や特性で、調整も変えないといけないところなど、ソックリ同じである。
最後に、昭和44年、リヒテルが浜松のYAMAHA工場でお礼のコンサートを開いていていたなんて、これまた初めて知って驚いた。
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