当方は個人事業主なので、給与とかボーナスとかをもらったことがない。当家の大蔵省(家内)に必要なときに申請し、支給して頂く仕組みである(笑)。そこで毎年末、機材を一個購入すること(上限有り)で自分へのボーナスとしてきた。昨年はコロナ禍で、いつもとは全く違う1年だったし、画期的に欲しい機材もなかったのだが、やめとけばいいのに、アンプとは異なって修理の出来ないアイテムの中古品に手を出した。MC-L1000である。30年落ちの中古であっても購入価格は発売当時の二倍近いのに、手に取ってみるまでは程度もわからん博打みたいな買い物である。しかも、壊れる方が早いかもしれないのにローン払い!たとえ未使用品であっても大丈夫とはいえない。プリント基板のマイクロコイルとそのリード線は、置いておくだけでも錆を生じて断線する。実際、10年以上前に熊本の師匠から譲り受けた未使用品がそうだった。
最近、オルトフォンからダイヤモンドカンチレバーの超高級カートリッジが発売になったが、すでにかつてオーディオテクニカにもAT-1000というダイヤカンチレバー(純正ヘッドシェルAT-LS1000)のカートリッジがあったし、その昔はダイナベクターにもあったと思う。原理的にカンチレバーのたわみがなく、針先と相似形に正確に縮小した振動がコイルに伝わるので、立ち上がりの早いダイナ一ミックで情報量の多い音質が期待できるのだが、カンチレバーがダイヤモンドでなくても、やはりチップの直上にマイクロコイルを配置した、針先と同じ大きさの振動を得るMC-L1000には一歩を譲る物であったと認識している。
で、音が出ることを確認の後、エアダスターで注意深く針周辺のゴミを飛ばすと、結構きれいな個体だった。爪楊枝の先を削って、顕微鏡下にギャップ掃除をしたくなるが、この際はぐっと我慢してそのような危険は犯さない。で、結果オーライ(表現が古い!)。MC-L1000の独特の音を維持している。手持ちの健康な(?)ものと比較しても個体差こそ感じられるが、音質が落ちている感じはない。AT-ART1000で行くぞと言ってたのに、何故博打をしたかというと、瞬発力というか鋭さの表現ではどうもMC-L1000にはかなわないように感じるのだ。
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